境界から見る景色

はじめましての気持ち



母と導かれるように、


計画ではなかった、お寺へ寄りみち




母は最近、心が揺れている


御神籤に手を伸ばす人では、絶対になかったし


お守りを買う人でも絶対になかった



子の安全や健やかさを


神仏に祈って


御守りを持たせる人でもなかった



でも、人生の終盤


父の死の縁の希望さえも潰したまま

逝かせた


自分の醜さ、

人間としての恥を


一瞬受け止めた母だった


その恥を


私は忘れて欲しくはないし


それが出来なければ


苦しい最後しか迎えられない事を

知っているからこそ


最後のチャンスなのだから

もう逃げるな、と


願う



目に留まったお寺へ寄ると


(  あ、真言宗・・・やっぱり)


最近、きてるんですよ


波が



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父母は無宗教だったけど  、父母の実家は

どちらも浄土真宗だったそうです


でも、2人が生前に購入したお墓を管理する

お寺の宗派は、真言宗でした


葬儀もそこで、真言宗の流儀で行いました。




そこで、出逢ったのが


不動明王さまでした




父が荼毘に伏されるまで


姉と母と一緒に、


父の亡骸と共に過ごした3日間は


嘘っぽくて薄っぺらな猿芝居に


翻弄された


苦しいものでした。





通夜の日、


不動明王さまが目に止まりました



私の守り尊は 不動明王さまなのだけど、


お顔が少し怖いのと


真言宗とは御縁がなくて


あえて注目する機会も必要もなく


知っている程度でした。




ただ、


普段、よくコイントスで


色々を探るのですが


そのコインは


十数年前から


御縁があって手に入れた


意識した事が無かったけど


不動明王さまのカーン(文字)が入った


六角形のコインでした。



これは旅先で、


小さな息子と一緒にいた時に


男性に買わないかい?と、声をかけられて(これも今思えば、不思議)


当時、キラキラしたものが大好きだった息子にねだられて


2枚購入したものの一枚でした。



私には良い思い出のコインで


ずっと使い続けてきたものです。


何はともあれ


迷った時にも

悩んだ時にも

怒った時にも

励まして欲しい時にも

孤独な時にも


祈って、祈って、祈って、


問いかけていたのは


不動明王さまのコインでした


ものすごく正直な想いを


不動明王さまのカーンに託していたのですね


実は既に、十数年のお付き合いだったとも、


いえるのか・・・



葬儀場で、初めて意識した不動明王さまと


向き合った時の自分は、



自身が業火に焼かれている、というより


炎、そのもの、でした。



私が、


彼らを、燃やし尽くしてやる、という


炎の気持ち。



あぁそうか、と。



恐れ多いけど


不動明王さまの気持ちが


わかる気がしました。



強面なお顔にも


苦しみや


悲しみや


慈悲の心も


隠されていることも


感じていました。



初めて


不動明王さまに


祈りました。




『 彼らに因果応報を 』




持ち堪えるのが


やっとな苦しみと


心に納めきれない


目の前に繰り広げられてる


茶番の異常さを




不動明王さまは


『我がいる、1人ではない』と


言って下さっている


そう思う事で


本当に、ギリギリ耐えられた。




神仏には疎いけど


ありがたい、と思いました。




そこから、不思議と


真言宗づいているのです・・



特定の拝む対象がある、という事が


私のスタイルではなかったし


生涯、絶対にないとすら思ってきたのに




父の事がきっかけで


不動明王さま、だけは


手元にお迎えしようか???と 


今、思っているほどです。


私の守り尊なのも、必然でした。


人生の象徴、のような御本尊さまでした。



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母が、多分、


何十年かぶりに引いた御神籤は


『 凶 』でした。



内容は、それはそれは 


酷いものでした。



全てが、駄目!


仏を拝みなさい


命の危険さえある。




母は、気丈に『 凶だって!』と


笑っていましたが


動揺していました。




うん


凄いタイミング


でも、きっと必然だよ


シンクロニシティだよ


完璧な流れ。



ならば ここは、


心、揺れないとね。


痛い場所に触れないと。



人間になって、還っていかなきゃ。


頑張れ。




そう思いながら


寄り添った。




素晴らしい眺めの木陰を


風が吹き抜けてゆく中で


少し腰を下ろして


あえて、時間をとりました。




少しして



「これ以上はない底にいるって事で、

これ以上堕ちるなって事だよ。

ここから、這い上がらないと。」


「でもね、頑張りますって心で決めて、境内に御神籤を結んで帰れば、きっと厄落としになるよ。」




父がそこにいるのかな。




母には、


私から、身代わり守を買って渡しました。




母の引いた『 凶 』の御神籤に


命の事も書かれていたから。



揺れた心全て


母が自分で越えるべき宿題ですが



目撃している者として


動く心にも従って。



少しの言葉と


お守りに


託しました。



それが、何かに 


変わりますように


母が、一つでも


旅立つまでに


自分が看取るべき心を


看取れますように。


なし遂げられますように。